ふと我に返ってみると、取るに足らない私が宮さまの御前にいることさえ恐れ多いことだと、参上が辛く思えてきた。
宮に初めて参りたる頃 続き
明け方近くなると、早く局にさがりたくて不安でいっぱいになる。
「葛城の神(=顔を見られるのが嫌で夜に働いたという)もしばし」などとこちらを見て仰せられるので、正面からの私の姿は見せてはいけないと、臥した姿勢でいるので、御格子も上げないでそのままにしていてくれる。
女官が参上して、「御格子を上げてください」と言うので、これを聞きつけた女房が上げようとする。
「駄目よ 」
と宮さまが優しく仰られるので、それとなく察した女官が笑いながら帰っていく。
その後もいろいろなことを聞かれ、それに答えているうちに時間が結構経ってしまった。
「早く局に帰りたいのね。さぁ早くお戻りなさい。夜になったら早めに来るのよ」
やっと局に下りられた。直ぐにそこかしこの御格子を上げると雪が積もっていた。とても綺麗だ。
「今日は昼に参上しなさい。雪が降っているので、あなたのこともはっきりとは見えないでしょう」と、その後はたびたびお召しになられる。
「どうして籠ってばかりいるのですか? いとも簡単に御前に参上するのを許されたのは、宮さまにお考えがあることなのです。その御思いに応えないのはどういうことでしょう? 」
私の局の主女房から急かされて局を出るのだが、なんとも我あらぬ心地がして、参上するのがとても辛い。