連れ合いが作る旅行ガイドも着々と出来上がってきた。Amazon、メルカリ、ブックオフで手に入れた旅行ガイドや神社仏閣、お伊勢さん、城や郷土の歴史関連の中古本を買い漁り、研究に研究を重ね、遂に16Day's旅行ガイドが完成した。初版完成は1月21日、ホンダで異音を見てもらったのが1月31日、2月はぶどう膜炎治療に使うステロイド点眼液の後遺症で白内障になり手術。超ド近眼だったのに眼鏡なしの快適な生活が始まった、ただひとつの問題を除いては。以前は見えていた近くの物がみえずらくなったのだ。そういわゆる老眼になってしまった。人工のレンズが入っているため、これはどうしようもないらしい。が、目の方もなんとか旅行に間に合った。
パスポートは出発前日に届いた。海外旅行用のパスポートにそっくりな造りで、赤い下地に公式キャラクターのミャクミャクが描かれている。しっかりしたつくり、透明なビニールケース付きで雨の時でも安心だ。ストラップもついていて首から掛けられるタイプだ。ストラップの紐の部分にもミャクミャクが描かれている徹底ぶりだ。パスポートの中のページには、訪問したパビリオンのスタンプが押せるようになっている。なるほど、心をくすぐる仕掛けなんだろう。大阪万博の前評判はすこぶる悪いが、それだって半世紀に一度あるかないかのイベントだ。今回を逃せば生きている間に万博に行ける機会などあろうはずがない。目一杯楽しんでやるぞと心に決めた。パスポートは、開くと訪問したパビリオンのスタンプが押せる、思い出を残せるようにもなっていた。
愈々明日午後には出発ということで、車の中に荷物は積み込み、今日はいつもより早く寝ることにした。ぐっすりと眠りについた恐らくノンレム睡眠中に、ピンポン、ピンポーン! と、家のチャイムが夜の静寂の中に鳴り響いた。驚いて目が醒めた。誰だろう? 時計を確認する。深夜0時だ。こんな遅くに訪問者の訳がない。子供たちなら鍵で入ってくるはずだし、不審者に違いないと思いながら、階下迄降りて行った。
「誰だ!? 」少し強めの口調で応対する。
「あー、俺。SOS! 」
34歳になる次男だった。
「どうした? 」
「部屋の鍵を持たないで、車で買い物に出ちゃった。(オートロックなので)入れなくなって。スマホも持ってないので、管理人にも電話出来ないし」
スマホを差し出すと、
「あっ、管理人の電話番号わからない。入り口に書いてあったのに~ 」
「じゃぁ、まずスマホ持っていって、かけてみ」
スマホと、家の鍵を貸した。
「うん、そうするわ」
小一時間たって、また家に戻って来た。
「何とかなったわ。アパートに着いた時、丁度他の部屋の人が帰ってきて、『すいません、閉じ込みしちゃって」と言って入らせてもらった。ありがとう。じゃぁ、帰るわ」
折角早く寝たのに、台風一過ですっかり目が覚めてしまった。気を取り直し、再度眠りにつく。僕はどんな状況でも眠れないという事はないが、連れ合いの方は中々寝付けなかったようだ。
翌朝、いつものように早く目が覚めた。若い時なら昼過ぎまで寝ていたところだ。連れ合いも起きてきた。
「眠れなかった… 」
今宵はフェリーの中、2時間程しか寝る時間がない。可哀そうだが仕方がない。
そしていつも通りに朝食をとり、顔を洗ったり、歯を磨いたり、日常のルーチンワークを淡々とこなした後、持ち物の整理をした。連れ合いの方は準備万端だが、僕はいつもぎりぎりで、直前に用意をする。まずはお金関連、これは最も大切だ。何を忘れたってお金さえあれば大概は何とかなる。次に薬、こちらは市販薬ならなんとかなるが、潰瘍性大腸炎、中性脂肪と尿酸値を下げる薬、ぶどう膜炎の治療用点眼液。これらは、忘れた場合、替えが効かないので必ず持つ必要がある、念のため20日分。あとは下着類。
「下着は持ってくれた? 」
「パンツとシャツ、靴下は適当に入れといた。どうしてもはきたいパンツがあるなら持っていけば! 」
どうしても履きたいパンツなどあるはずもなく、
「上着とズボンとかは? 」
「半袖のカラーTシャツと、雨の時でも大丈夫なポンチョとズボンは持った。」
なるほど、ほぼ大丈夫だな。
「あとは、気に入ったアロハシャツとか持っていけば? 」
そういうので、アロハシャツを4枚とジーパン2つを持った。
「サンダルとか持っていったら? 雨の時は、ポンチョとサンダルの方が楽じゃない? 」
ということで、サンダルも持った。ここまで来たらもう一安心。いつものようにミルで豆を挽き、コーヒーを入れる。今日はモカマタリだ。
「何時に出る? 」
「昼前に出れば? 」
「だけど、あんまり早くついても時間余すんじゃない? …でも、まぁいいか。姉夫婦のところで、夕飯食べさせてもらって、風呂もご馳走になって行くか」
ということで、午前中に出発することにした。