/活動日誌/閑話/16Day's 16Day's 6章の③鳥羽、真珠島 2026-06-26 ( 初回配信 2026-06-26 ) facebook tweet LINE はてブ Pocket 9:54、国道一号をひた走り、やがて浜名バイパスに乗る。左手に海がひらけた。抜けるような快晴だ。光は容赦なく強く、潮の匂いを遠くからでも押しつけてくる。浜名大橋に差しかかる。360°、遮るもののない展望がぐわっとひらき、浜名湖の青は、澄みすぎてむしろ底知れぬ深さを思わせた。このまま空へ溶け込んでいくのではないか、そんな錯覚がふと脳裏をよぎる。 浜名バイパスからそのまま潮見バイパスへ、さらに42号線へ。海は背後に退き、景色はじわりと内陸の表情を取り戻す。単調な走行が続いた頃、赤羽漁港に併設の赤羽ロコステーションに滑り込む。トイレ休憩。車も人も、やけに多い。土産物をざっと冷やかし、11時18分に再び走り出す。 11時43分、伊良湖フェリーターミナル着。時間に追われるように乗船手続きを済ませ、車列に紛れ込む。12時08分、伊勢湾フェリーに吸い込まれるように乗り込む。誘導員に従って車を停めるやいなや、甲板へ飛び出した。海は広い。さて、どちらが船首か、と一瞬迷う。直感に頼って立ち位置を決める。 …出航。 よし、こちらで正解か。そう思ったのも束の間だった。フェリーは何食わぬ顔でくるりと一回転し、こちらが船首だと思い込んでいた場所は、あっけなく船尾へと変わった。見抜かれたような気がして、少しばかり癪に障る。今さら慌てて移動するのも大人げない。景色は同じだ、と自分に言い聞かせる。そうして、シャッターを無意味なほど切り続けているうちに、13時39分、鳥羽に着いた。 車は、乗り込んだときとは反対側から吐き出された。なるほど、あの一回転はこのためか、とあとになって腑に落ちる。だが、その程度の悟りは、たいてい物事がすべて終わってしまった後にやってくるものだ。 近くの食堂で刺身定食をかき込み、ミキモト真珠島へ向かう。ここでも係員に急き立てられるようにして駐車する。外へ出てみると、車輪の片側が半分ほどはみ出し、いまにも落ちそうだ。係員はこちらに目もくれず、次の車の誘導に余念がない。仕方なく自分でバックし、位置を整える。 館内へ入る。真珠博物館、御木本幸吉記念館――どれも整然としていて、どこか隙がない。見て回っているうちに、海女の実演が始まるという。外へ出る。陽は出てるが、空気は冷たく強く、肌を突き刺してくる。待つこと十余分。遠くから船のエンジン音が近づいてきた。いよいよだ。 海女たちは、こちらに向かって気安く手を振っている。数度、円を描くように旋回し、やがて定位置に落ち着く。さて潜るぞ、という合図もなく、彼女たちは一人ずつ船縁に立つ。背筋は不自然なほどに伸びている。そして…そのままためらいなく後ろ向きに倒れ、体を回転させながら海へ飛び込んだ。 よいしょ、という気軽な身振りを想像していたが、それとはまるで違う。ためを作らず、視界も確かめず、身体を任せるように水へ落ちる。豪快というより、むしろ無造作だ。見えない場所へ身を投じるその姿に、一瞬、刻が止まった。