/活動日誌/閑話/16Day's 16Day's 5章の① 2026-03-21 ( 初回配信 2026-02-08 ) facebook tweet LINE はてブ Pocket 4月11日、7時11分。 ホテルいかほ銀水を後にし、15号線へ車を滑り出させる。朝の空気はまだ芯を残しており、エンジン音さえ澄んで聞こえる。平沢川を渡り、7時19分、五徳山水沢観世音に着いた。 水沢観世音、正式には五徳山水澤寺。およそ千三百年前、推古・持統両天皇の勅願により、高麗より渡来した高僧・恵灌僧正がこの地に開いたと伝えられる。山号「五徳山」は、推古天皇の宸筆による額に由来し、本尊は伊香保姫の持仏であったという十一面千手観世音菩薩。七難即滅、七福即生。人はいつの世も、困難を消し、福を呼び込む言葉を必要としてきたらしい。仁王像に睨まれ、風神雷神に挟まれながら仁王門をくぐる。二階には釈迦如来、文殊、普賢の三尊が静かに据えられている。六角堂、龍王辨財天、水子地蔵、そして十二支の守り本尊、信仰というより、信仰の重なり合いが、境内全体を押し上げているようで、思わず足が止まる。 さて、腹が減った。水沢まで来たからには、水沢うどんである。山本屋、田丸屋、大澤屋、大澤屋、丹次亭。念のためと、暖簾の前まで車を寄せてみるが、どの店も固く口を閉ざしている。朝の光を拒むかのように、シャッターは下り、微動だにしない。諦めきれず、もう一度大澤屋へ。暖簾がわずかに揺れたようにも見えたが、気のせいだった。 水澤、水香苑、水澤万葉亭――店はびっしり並んでいるのに、うどんにありつけない。旅先では、こういうことがごく普通に起こる。真っ直ぐ進み、半ば気持ちを切り替えたところで、7時55分、「食の駅前店」が視界に入った。開いている。 朝定食、コーヒー付き、五百円。あまりに安く、思わずおかずを二品増やし、一人七百円。腹は確実に、そして充分に満たされた。名物にこだわるのも旅だが、こうした肩肘張らぬ食事が、後々まで記憶に残ることがある。 再び高速へ。しばらく走ると、カーナビが告げる。「高速二股、右側通行止め」。降りろと言う。すでに分岐は目前で、周囲の車は一斉に車線を変え始める。時速百キロを超えたまま、判断を迫られる。降りる車、直進する車。「えぇい、まあよ」と、こちらは左側を直進する。しばらく走ると、通行止めだった右の道が、左側のこちらと何事もなかったかのように合流してきた。結局、同じ道だったらしい。では、なぜ、ここで二股に分かれたのだろう。理由はわからない。ただ、旅にも道にも、意味のない分岐というものが、時おり用意されている。人はそこで、考え、迷い、そして進む。 250411072021495 250411072151516 250411072156060 250411072212960 250411072224995 250411072354566 250411072425534 250411072446990 250411072522973