/活動日誌/閑話/16Day's 16Day's 4章の① 2026-03-21 ( 初回配信 2025-12-21 ) facebook tweet LINE はてブ Pocket どうやら、よほど快適な寝床だったらしい。いつもなら四時台に目を覚ますのに、この朝は六時まで一度も目が醒めなかった。深く、静かな眠りだった。目を開けて、まず気づいたのは湿気だった。車内の窓という窓が白く曇り、細かな水滴をびっしりと抱え込んでいる。まあ、そのうち乾くだろう。そう思って、その光景は早々に見なかったことにする。旅先の朝は、迷っている暇がない。寝床を畳み、それぞれの持ち物を元の場所に戻していく。電源コードを抜き、ライトや充電器を手際よくしまう。運転席と助手席を通常の位置に戻し??と書くと、私がすべてやったように聞こえるかもしれないが、実際のところ、その大半は連れ合いの仕事である。黙って手を動かす人間がいる旅は、たいがい上手くいく。洗面所で顔を洗い、歯を磨き、ゴミを所定の箱へ。よし、出発と思ったところで、窓の曇りがまったく取れていないことに気づく。これでは前が見えない。最大出力でエアコンを入れ、しばらくじっと待つが、曇りは頑として動かない。仕方なくティッシュで拭き取る。効率は悪く、見栄えもよくないが、旅とはたいていこういうものだ。 7時1分、RVパークを出発。ようやく、この日の旅が始まった。朝食はジョイフル宇都宮鶴田店。黒酢定食と若鶏バランス定食で、二人分しめて1,987円。過剰でも不足でもなく、実にちょうどいい。その足でファミリーマート子ども科学館前店に立ち寄り、ボスブラックとモカブレンドSを買う。東北自動車道へ入り、栃木都賀、岩船ジャンクションを経て北関東自動車道。足利ICを抜け、11時6分、群馬県のスバルビジターセンターに到着した。管理棟の入口には警備員さんが立っており、そこで工場見学を申し込む。ほどなくして、可愛らしい案内のお姉さんが現れ、向かいの駐車場へ車を誘導された。いよいよ見学である。正面入口を抜け、右手の建物へ。まず目に飛び込んでくるのは、建物の外に展示された一機の飛行機。全面ガラス張りの空間に置かれ、空と地上を同時に映している。前身が中島飛行機であることを思えば、ここにあるのは必然なのだろう。ほんのひととき、大東亜戦争という言葉の重さが、胸の底をかすめる。次いで、剥き出しのシャーシに水平対向エンジン、シンメトリカルAWD、タイヤとサスペンションが組まれた展示車。あまりに整っていて、無言のまま引き寄せられる。機械というものは、ここまで正直なのかと思う。さらに奥、ひとつだけ閉ざされた空間があり、扉を開けて中へ入る。そこで、足が止まった。左ハンドルのスバル360、スバル1500、初代サンバー、初代レガシィツーリングワゴン、インプレッサWRC2009。往年の名車たちが、所狭しと並んでいる。もう、お姉さんの説明など耳に入らない。ただ黙って、写真を撮る。前から、後ろから、斜めから。室内も。記録というより、衝動に近かった。二階の「SUBARUギャラリー」には、年代別のエンジンがずらりと展示され、スバル360の貴重な石膏原寸モデルもあった。時間は驚くほど早く過ぎる。見学を終え、外に出て、再び飛行機の前へ。「記念撮影はいかがですか?」その一言に甘え、飛行機を背に写真を撮ってもらった。つくづく、優しいお姉さんだった。12時9分、スバルビジターセンターを後にする。胸の奥に、少しだけ昔の香りが漂っていた。 250410111659278 250410111713435