/活動日誌/閑話/16Day's 16Day's 4章の② 2026-03-21 ( 初回配信 2026-01-02 ) facebook tweet LINE はてブ Pocket 12時45分。 伊勢崎市今泉町、「洋食厨房さくらさく」で昼食をとる。胃袋が静まると、次は頭が動き出す。14時、富岡市営宮本町駐車場着。目的地の富岡製糸場までは、ゆっくり歩いて五分ほどだ。入場料は大人一人千円。時代への通行料としては、むしろ安い。 順路に従い、まっすぐ東置繭所へ入る。左右の展示室を抜け、工場長宅、社宅、西置繭所、乾燥所、副蚕倉庫……と足を運ぶ。主要な建物はすべて、木の骨組みにフランス積み煉瓦をまとった木骨煉瓦造。時間を支えるための構造が、いまも静かに呼吸している。 国宝・繰糸所に入ると、柱のない空間がふいに眼前へ広がる。天井が高く、空気が澄んでいる。そこでは、当時と同じ方法で糸を繰る実演が行われていた。――よくもまぁ、こんなに器用に。糸は細く、しかし確かに引き出されていく。 創業当初、「フランス人が女工の生き血を吸う」などという奇怪な噂が広まり、女工集めが難航したという話を思い出す。だが実際は、労働時間は一日七時間半、日曜休業、技術に応じた月給制。宿舎も病院も構内に整えられ、費用はすべて国費。一般教養教育まで施されていたという。近代的という言葉だけでは足りない。理想を、現実として組み上げようとした工場だった。 検査人館、男子寄宿舎、女工館、診療所、首長館を外から眺め、敷地の奥で満開の桜に出会う。これらが、ほぼ当時の姿のまま残されてきたという事実に、しばし言葉を失う。遺してきた先人の労を思い、静かに一礼して、15時30分、製糸場を後にした。16時10分、渋川の山一石油で給油。 札幌ナンバーが珍しかったのか、店の人が次々と話しかけてくる。その距離の近さが、少し嬉しい。 今夜は伊香保温泉街のRVパークで野営の予定だった。一泊3,850円。だが着いた途端、土砂降りだ。初めての伊香保で、この雨の中、温泉の後に外で寝床を整える気力はない。潔く諦め、スマホで旅館を探し、移動する。 玄関ホールでは、七十を過ぎたと思しきおばあちゃんと、その孫だろうか、小さな女の子が遊んでいた。「いらっしゃい」その一言で、肩の力が抜けた。部屋は確保できるという。すぐにまた車に乗り、伊香保の温泉街へ向かう。駐車場に車を置き、名物の三百六十五段の石段を登る。雨に濡れた石は黒く光り、足音を静かに吸い込む。17時50分、「SARA’S terrace Arraiya」で上州牛を頼む。注文を告げると、バックヤードから歓声が上がった。雨で客が少なかったのだろう。少しは役に立てたなら、悪くない。 夕刻も遅く、雨脚も強い。散策は早々に切り上げ、旅館へ戻る。湯に浸かり、いつもの晩酌。こうして一日は、ほぐれるように終わっていった。 250410145116534 250410144928386 250410150415507 250410150439878 250410150604856 250410151509314 250410151356647 250410181523761